ポル子のカルチャーショックリハビリ日記 その1
「慇懃無礼と言うなかれ」

★ プロフィール ★
ポル子 - 1998年、7年間の社会人生活ののち渡英。学生として4年4ヶ月ロンドンに暮らし、その間英語、アート、コンピュータなどを勉強しつつ、清く貧しく美しく暮らす。ついに観念して2002年10月に帰国。現在北海道在住。

- 10月15日 帰国 - 

私が帰国したその日は、奇しくも北朝鮮拉致被害者の皆さんが羽田に降り立った日でもある。24年間彼らはずっとかの国にいたのに対し、私はこの4年間に3回も一時帰国をしているのだから、私にはカルチャーショックなどあるはずがないと思っていた。

帰国後最初の1週間は一時帰国気分だったように思える。喰いたいものを喰い、朝から晩までテレビばかりを見、たまに外出しても、スーパーやコンビニに行ってはイギリスにない新製品を見て楽しんでいた。だが日がたつにつれ、何とも言えない違和感が私の中からわき上がってくるのを感じていた。

日本人、又はオリエンタルの声は、他の人種に比べると高く、金属質っぽく思える。それに、日本人独特のことと思うが、電話の応対や接客の時に普段よりワンオクターブ高く声を発し、割と鼻にかけて発音することが多い。

ある日スーパーに行った時のこと、ぼーっとしていた私の頭を耳から貫いた物、それは
「ヒラッヒャイマヘェ〜エッ(「エッ」のところが裏返り気味になる)」
という女性従業員の声。私にはそう聞こえた。多分私だけだったと思う。それは日本人の接客販売における正しい「いらっしゃいませ」の発声法だったのに。だから、違和感など覚えるはずもないのに、その時私の背中に確かに悪寒が走ったのだ。

一つ気になると他のことも目についてくる。両手で代金を受け渡すと言う行為にも馴染めず、それがわざとらしく、心がこもっていないように思えて「こういうのが『慇懃無礼』というのよねー」とその時は自分で勝手に納得していた。

だが日が経つにつれ、どうしてそんなに違和感を覚えたのかにぼんやりとだが気がついた。イギリスの販売員はそれとはうって変わって素っ気ない。買い物をすると、レジでは'Hi', 'Fifteen pounds please', 'Five pounds change', 'Thank you, bye-bye' で終わり。下手すると、スーパーマーケットのレジだと挨拶もしない奴もいたりする。
その度に「冷たい」とか「人種差別だわ!」と傷ついていたものだが、日が経つにつれすっかり慣れてしまい、むしろ日本の販売員の方を「うざい」と思ってしまっていたようだ。

だがこれはどっちがいい悪いの話ではない。あくまでも両国の文化の違いから来るものなのだ。イギリスの社会が個人を尊重し、余り踏み込まないようにするというものだとしたら、日本だと相手のことを考えて常に先回りしていかなければいけないように思える。イギリスではお客さんと目が合ったらハローと言えばいいわけで、日本だとお客さんが100メートル先でも「ヒラッヒャイマヘェ〜エッ(=私はこんなに遠くからでもお客様のことを気にかけているのですよ〜ッ)」と叫ばねばならないのだ。

私はイギリスの慣習の、自分に都合のいいところだけを取り入れて日本に帰ってきてしまったようだ。日本の習慣は面倒、イギリスはらくちんという多大なる誤解のもとに。
おかしいなー、イギリスにいた時は「日本のこういったすばらしい慣習を忘れないようにしよう」と思っていたはずなのに…

つづく が、次号はいつか未定。お楽しみに!!

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