ヘッジホッグ、汗と涙のワーホリ物語 No. 30
「韓国のおでん」

おでんパティーの後、ヨンジンいっしょに片付けをしていた僕は、どうしても彼らが話していたものが気になってしょうがなかった。そう、「韓国のおでん」である。

「ヨンジン、"韓国のおでん"というのは、いったいどんなものなんだい?」僕の方を向いたヨンジンは、得意の笑顔をみせてこう言った。「ヒロ、韓国のおでんは、とても大衆的な食べ物なんだ。街中にあるマクドナルドや、KFCみたくファーストフード感覚で食べる食べ物なんだよ。」(ファーストフード?)僕は、正直その響きにピンとこなかった。日本では全国どこ
のコンビニエンスストアーでたいてい置かれている。確かに、ファーストフードといえば、それに値する。しかし、ファーストフードというには、(食べる量にもよるが)それほどお腹の膨れるものでもないし、おでんそのものが西洋的なネーミングじゃないので、何か家族が週末のランチにおでんレストランでテーブルを囲んで楽しく食べてお子様セットに付いてくるおもちゃで遊んでいる絵図も不自然である。

とはいえ、日本での話で韓国となるとそれが当たり前なのかもしれない。たとえば去年、ケンブリッジに滞在していた時、出会った韓国人から聴いた話では、韓国での真夏に海水浴で食べるものが寿司やのり巻きだという。これも、ぼくらからしてみれば、海水浴はヤキソバ、焼きトウモロコシ、いか焼きもしくはたこ焼き、そしてカレーライスであろう。食は、その国の文化のひとつなので、こういった差が現れても受け入れなくてはならない。

片付けを済ました僕らは、自分達の部屋に戻ってきてからもさらに「おでん日韓対決」が繰り広げられた。好奇心旺盛の僕に圧倒させられたのであろうか、ヨンジンは最終的に僕の為に「韓国のおでん」を作ってくれると約束してくれた。

そして、ついに「韓国のおでん」との初お披露目の日がやってきた。この日、用意されたメニューは前菜はなく、いきなり主食でプルコギ、そして「韓国のおでん」であった。さて、その「韓国のおでん」がどんなものであったか説明を加えると、
?材料はニンジンとさつま揚げ。
?味はお醤油に少し唐辛子が使っており、ピリ辛。隠し味は塩?
?おそらく出汁は使っていないのでなかろうか。
?以上を、鍋で煮込んだもの。
であった。これから、察する人はお分かり頂けたであろうか、まさに日本でいう「さつま揚げとにんじんの煮物」であった。

ヨンジンにこの食材の購入場所をきくと、「ニューモルデン」だと答えた。ロンドンで数ある国鉄駅のひとつウォータールー駅からテニスで有名なウィンブルドン方面への電車で行くことができる、まさに「イギリスの韓国村」といったところである。町
中にはハングル文字が並び、韓国食材屋はもちろん、おいしい韓国料理も食べることができる。今回食べた「韓国のおでん」もここで、煮るだけのインスタントを購入することができるという。ちなみに、日本に似た(そっくり?)のお菓子もロンドン市内で買うより断然安く購入することができ、貧乏学生には都会のオアシスといったところだろうか。

一口、「韓国のおでん」をほうり込む。お口の中で醤油ベースでピリッとした味が豊かに広がり、食べなれた味のせいだろうか、祖国の思い出がパァッと僕の脳裏を駆け巡った。ふと、ヨンジンの方に目をやると、彼も目をジィッと瞑ったまま「韓国のおでん」の懐かしさをかみ締めているようであった。これこそ、最高の食卓のひとつで
はなかろうか。僕は、このおでんを賞美した。
   
つづく


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