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3ヶ月に及ぶ、このターム(学期)も残すところ2週間となった。しかも、この学校には最後の週にクラスのレベルアップの試験がある。リスニング(聞く)、スピーキング(話す)、リーディング(読解)、文法、ライティング(英文での手紙、レポート作成)この5項目の合計で60ポイント以上をマークしなければならない。そう、生徒たちにとっては試験前の追い込みの時期である。しかし、一部全くレベルアップを気にしない連中がいた。
そして事件は、いつものように学校に行き、教室に入ろうとした僕の真後ろで起こった。
「オデンガナニカ、オシエタイデス。」
「・・・・・・?」
僕は、誰がそんな片言かつ意味不明な日本語を言ってるのであろうと思い、振り返ってみた。後ろには、一人の女の子が立っている。彼女の名は、ヨンシン、韓国から来た小さくかわいらしい生徒である。彼女は、顔を真っ赤に赤らめながら恥ずかしそうに再び片言の日本語を話しだした。
「オデンガナニカ、オシエテタイデス?」
僕は、さらに困惑してしまった。(いったい、ヨンシンはなにが言いたいのであろう?"オデン"というの"おでん"のことであろうか?それとも韓国の特別料理のことなのだろうか?それにしても、"教えたいです"なんて、別に僕の許しを得なくても勝手に教えればいいんじゃないのだろうか?)
すると、ヨンシンの後ろの方で笑い声が聞こえてきた。
「ヨンシン。違う違う。"オデンガナニカ、オシエタイデス"じゃなくてね、"オデンガナニカシリタイデス"なの。」
その声の本人は、同じく韓国からやってきたユンヒであった。そしてそこには、酒飲み友達のジンハーンに、キョンシ、ヨンジンといったいつものメンバーが揃っていた。ユンヒは、韓国の大学でデザインの勉強をしていて、いつか海外でその関係の仕
事に就きたいという大きな夢を持っている女の子である。海外の1つに日本が入っていて、そのため第2専攻として日本語を大学で受講しているという。そのため、流暢ではないにせよ、きちんとした日本語を話すことができるのである。そして、今回の事件のきっかけを作った張本人でもあるのである。
考えてみれば、その前の週末に、僕はいつもジンハーンから韓国料理をご馳走になってばかりなので、何かお礼がしたいと思い、おでんを日本食販売店で購入してご馳走してあげたのであった。そのとき、大変おいしかった、とヨンジン、ジンハーンが言っていたので、おそらく彼らがユンヒ達に伝えたのではなかろうかと思う。そこで、ユンヒはヨンシンを使って、僕から再びご馳走にあがろうと考えたのであろう。ところが、使った子の人選が失敗であったにちがいない。きちんと、教えたつもり
が、本人は覚えきれなかったからである。
ここまで、僕のおでんを食べたいという声があるのにほっとくわけにはいかない。そこで、今週末におでんパティーを僕は計画した。
「おでんパティー?もちろん、行く、行く。」
誘いの声に、いつもの韓国人メンバーはもちろんのこと、他数人の韓国の生徒達が集まってきた。そう、彼らこそ、試験を気にしない連中である。
そして、僕はおでんの液、さつま揚げ、たまご、きんちゃく、イカ巻き、ごぼう巻き、ちくわ、大根、とうふ等を前日に用意しておいたので当日、それらを大き目のなべに入れ火にかけていた、そのとき、ルームメイトのヨンジンがその様子を見にやっ
てきた。
「ヒロが生み出した、あのスープの味はどうやって出したのか気になってしょうがないんだ。教えてくれないかな。」
僕は、教えてあげたいのだが、今回も前回も始めから市販で売られているおでん用のスープを使用していて、実際、自分で味を整えたのではないので説明しようがなかったので、
「企業秘密だよ、ヨンジン。」
と伝えると、彼は余計に興味が湧いてしまったようで、
「だったら、僕はここから1歩も離れないよ。ジッとヒロが何をするか確認しているからね。」
どうも彼は、意地悪にとってしまったらしく、まるで小さな抱っこのように言葉どおり、僕がおでんを煮込んでいる間中、キッチンから離れようとしなかった。しかしながら、結局のところ、彼はスープの秘密を掴めなかったようであって、僕の
「準備できたよ。」
の声を聞いてがっかりした様子を見せていた。
ユンヒらが待ちに待っていたおでんをソファーのあるリビングルームに持っていくと、うれしそうな表情をみんなは見せたものの、何やら韓国語でヨンジンとジンハーンに尋ね始めた。お互いに納得しあいあって、僕の方をむいてみんな、ありがとう、と感謝してくれたが、僕の不思議そうな顔に気付いたヨンジンは、彼らの先程の質問を訳してくれた。
「実は、今日初めて集まったみんなは、おでんと聞いて"韓国のおでん"を想像していたそうなんだよ。」
「えっ?韓国のおでん?」
僕は、初めて聞くその話に驚き、ヨンジンの顔を食い入るように見ながら質問を加えた。
「おでんは日本独自の食べ物でなくて、韓国にも存在するのかい?しかも、全く別の物が?」
僕は、また新しい疑問にぶつかり、いつもの好奇心が沸いてきたのであった。
つづく
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