ヘッジホッグ、汗と涙のワーホリ物語 No. 24
「イギリスから観たワールドカップ 予選編」

五月雨でムシムシとした日本とは違い、ここイギリスは短い夏の訪れを今か今かと待ちわびている時期である。そして、4年に一度のビッグなイベントも短く長い期間中に、世界中の茶の間を賑やかにさせた。

韓国人友達が、ほぼ全員うちのアパートに集まってテレビのあるリビングを占拠している。僕はそのソファーの隙間で試合よりも彼らの反応を楽しんでいた。家を共にしているパキスタン人らは、呆れてしまっている。
「おぉ、おぉ、おぉ、あぁぁぁぁ。」
眼鏡をかけたキョンシは、せっかくのチャンスを逃した母国のプレーを見て頭を抱えている。彼らは、もうイギリスにいるのを忘れているかのように韓国語で互いに応援から雑談をしている。
「ヒロ。日本は運が良い。僕らは、アメリカもポルトガルも倒さないといけないんだ。日本がうらやましいよ。」
みんな韓国人連中は、うなずきながらサッカー好きなキョンシの話をきいている。正直いってあまりサッカーに熱心でない僕は、彼らの言う意味がもうひとつ理解できなかった。

日本戦がBBC(イギリス国営放送局)で放送された日。韓国人らは、誰一人集まらない。このリビングにいるのは、僕にパキスタンのフィリップだけである。人気がないのか、これがサッカーというものだろうか、関係のないゲームには興味がないようである。この番組のホストを務めたのは、ゲリー リネカー。不思議な縁である。彼は、名古屋グランパスで給料泥棒のように全く良いとこなしで帰っていった。彼は、今、ウォーカーズというポテトチップのコマーシャルに出演している。只今、キャンペーン中で当たりの袋に20ポンドが入っている。そして、そのコマーシャルの内容というのが、彼はそれを引き当てようと赤外線眼鏡をしてお店に潜入。先に店でウォーカーズを買おうとした小さな女の子の物に、20ポンドの影が写ったので、勝手にとっかえてしまう、というとても大顰蹙(だいひんしゅく)を買う作品になっている。
(なんだ、あれだけ大金名古屋から持ち帰っておいて、まだ小さな女の子から奪うのか)と、ネガティブに見てしまうのは、名古屋系の僕だけだろうか。

さて話を戻すと、リネカーは日本を「たった一人のスーパースターのチーム」と紹介した。もちろん、それが誰のことかはわかったが、それ以上にあまり選手の知名度がないんだということがわかった。少なからずとも、ヨーロッパの様々の国でプレーし
ている日本人選手はいる。しかし、そこらの話題は全く触れず、日本とベルギーのゲーム前にも関わらず、イングランドの今後の対策について他3人の解説者とともに話し合っている。よほど、人気がないようである。他、ブラジル、フランス、スペイン、ポルトガル等のゲーム前とは、全く雰囲気が違う。

ゲーム開始の時間が来た。リネカーは「デハ、イッテミマショカ」と片言の日本語で、日本のスタジアムにいるイギリス人実況と解説にバトンを渡した。彼らは、この試合のスタメンの名前を読みあげたが、何か聞いてて窮屈そうに読んでいる。まぁ、無理はないのだが。しかし、小野の名前は読み易かったようである。ジョン レノンの奥さんも同じ名字なので聞きなれているのであろう。

御承知の通り、日本はこのゲームは引き分けるものの残りのゲームに勝ち続け、初の決勝トーナメント進出を決めた。学校に行くとみんなから"Congratulations"(おめでとう)と言われ続けた。この頃になると、メディアも日本の選手に興味を示しはじめた。と同時に、本命のチームが相次いで予選で消えていく様子を「小さな諸国が強大な国々を食い尽くしている。」と評していた。その様子を中には面白味がないという人もいれば、その番狂わせに喜んでいる人もいた。

そう、もちろん韓国人はすごい喜びだった。まさか、予選を勝ち上がるとは、と母国の人ですら思ったぐらいである。決勝行きを決めたその日、韓国の女の子ジィヨンが自分の体よりも大きな韓国国旗を両手で持って、ここインド街サウスホールを走り回っているのを見かけた。インド人やスリランカ人、パキスタン人みなその光景に驚き笑っていたが、よくそんなものを手に入れることができたなという方が僕には興味の的が集まった。

南米、韓国、アフリカが集まった僕の学校はもちろん盛り上がったが、ここイングランドはそれ以上に街中で喜びと歓喜の声で盛り上がっていた。しかし、一部を除いては。
そう、ベッカム一人に敗れたアルゼンチンである。


つづく

 

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