ヘッジホッグ、汗と涙のワーホリ物語 No. 21
たかがオフィスクリーナ、されど。

オフィスクリーナ。その言葉通り、オフィスの掃除であるが。

採用された明くる日から、すぐジャッキーに連れられて大きなジレットの建物内を案内された。
一階が工場になっていて、ものすごい騒音のため、まったく何をジャッキーが説明しているか聞こえなかった。そのまま大きな通路の突き当たりにあるエレベーターから3階の今回僕の担当するオフィスへと向かった。その間にも大きな2つのオフィスを通り過ぎ、そこにたどり着くのには容易ではなかった。次回、自分一人で来た時、間違いなく迷子になるに違いない。僕は、ジャッキーの説明よりもどうやって出口に行けるかの目印探しに必死だった。
ジャッキーはオフィスに着く手前の別のオフィスの倉庫から掃除機を持ってきた。
「これはあなたがこれから所有する掃除機だからね。」そして、オフィスにはもう既にもう一人のジャッキーと同じスカイブルーのジャケットを着た優しそうな女性がゴミ集めをしていた。僕は、この二人の後に付きながら一緒に机の横の黒のプラスティックボックスから透明なビニールごと取り出し、別に用意してある真っ黒な大きめのビニール袋に入れた。そして、新しい透明なものを黒ボックスに取り付ける。この作業の繰り返しだが、中には飲みかけのプラスティックコップのコーヒーや、イギリス人ならではの紅茶が入っているので、それはまた別に用意したペットボトルに入れるよう指示された。この面倒な作業は、30個位の机ならば大した事はないが、このオフィスには、なんと130個の机が置いてある。この日、ゴミ袋にして5袋分回収できた。やっと終わった、とホッと一息つく暇も無く、今度はそのゴミをさっき通った一階に運ぶように指示された。さぁ、迷路のスタートである。

行ったり来たりしながら、四苦八苦の末、ゴミ回収場所にたどり着いた。ヘトヘトになって戻ってみると、二人とも今度は机ふきを始めている。(えっ?130個の机拭き!)僕はさすがにその仕事内容に愕然としてしまった。しかし、ジャッキーはそんな事は当然よとばかり、僕に布とクリーナ様のスプレイを渡して
「丸く円を描くように拭くのよ。」
と実演して見せて、去っていってしまった。残された僕は死ぬもの覚悟で取り掛かった。とにかく、仕事時間は2時間半。その間に終わらせなければいけない。しかし、幸運にもまだ数人のビジネスマンが未だ机に向かっている。(そう、そこは拭く必要はないんだ。反ってお邪魔になるから。)勝手な自分の解釈のもと、何とか残すところ2個。時間も終了時間残り10分。やり終えたんだ、という達成感を自己万で味わっているところに、
「ねぇ。ジャッキーに言われたから、キッチンの掃除の仕方教えに来た。」
と、ステファニーの友達のブラジルの女の子がやってきた。

「えっ!まだ、仕事があるの?!」
倒れそうになって来た。彼女は、モップを使って床拭きをして、そのあとテーブル拭きにシンクを洗剤を使ってきれいに磨いて、「今度からは自分でこれだけの作業をやるのよ。」とてきぱきとものの5分で作業を済ませて去っていった。僕は頭の中でシュミレートして、いかにして時間内に終わらせられるか考えないと次回大変なことになる、これはかなりきついアルバイトだなぁ、と今後を考えたらため息がでてきた。続けるしか道が無いので、辞めようとは思わないが。しかし、これは難題だなぁ。

楽しい事を考えることこそ、問題を難しくしない方法である。仕事初日から疲れきってしまったが、明日を考えたらその疲れも吹っ飛んでしまった。明日は、土曜日。そしてスクールトリップ(遠足)があるのだ。家に戻って直ぐに明日の荷造りを始めた。まるで、小学生に返ったかのように。すべてのうやむやは、深い眠りと共に消えていった。

楽しみにしていた明くる朝がやって来た。とてもいい天気であったが、運命の日にしてはふさわしいものではなかった。もうすでに、多くの生徒が学校に集まっていてざわざわとしていた。僕らは、迎えの車を待っていたのであるが、そこに最初に迎えにやって来たのは、なぜか校長のボイドであった。

つづく

ヘッジホッグ、汗と涙のワーホリ物語 Indexへ