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ここイギリスに着いて、最初の月曜日が来た。待ちに待った月曜日でもある。
「ヨンジン、朝だよ。起きて起きて、遅れるって!!」
僕は、まるで彼の母親のように彼の体をゆすったり、布団を剥がしたり彼を起こそうと必死である。それもそのはず、今日から学校がスタートするからだ。入学したばかりの新一年生みたいなものだ。とはいえ、昨年の12月以来、かれこれ3ヶ月はたっている。早くみんなに会いたい、そんな気持ち一杯でヨンジンへの迷惑を顧みず、ひたすらヨンジンの大きなおしりをたたき続けた。「起きないと、もうおいてくよ!」
ようやく目が覚めたヨンジンは、とても不機嫌そうに一言も口を利かず洗面台へむかった。ちょっとやり過ぎたかなぁ、"後悔先に立たず"とは、まさにこのことをいうのだろう。その間彼は、一人、キッチンでキムチとご飯でさっさと食べて部屋に戻ってきた。その様子は見ていないが、匂いでご飯に何をとりあわせたかは見当がつい
た。早速、僕は申し訳なさそうに、「さっきはごめん、ヨンジン。」しかし彼は、気にしてなさそうに"No problem"と言い、いつものマクドナルド顔負けの満面の笑みといっしょに返ってきた。
「それよりも、学校にいこう。ジンハーンは呼んだの?」
「あっ?!そうだった。呼びに行かなきゃ。」
ジンハーンとは僕らの隣りのルームに住む、もう一人の韓国人友達であり良き酒飲み友達でもある。
「じゃぁ、ヒロが呼びに行っている間に服を着替えて外で待ってるから。」
「OK!」
僕は慌てるように彼が住む62号室に行き、扉をノックした。
「ヒロ!おはよう!元気かい。」
ジンハーンとシェアをしているブラジル人のマイコーが扉を開けるなりラテン系独特の明るいノリで声を掛けてきた。
「やぁ。おはよう、マイコー。ジンハーンはいるかい?」
「上にいるよ。まぁ、入れ、入れ。」
彼とは昨年途中まで同じクラスで勉強していたからお互い気心は知れているのである。彼の部屋に行くと彼の姿はもう既になかった。しかし、むかいのバスルームから鼻歌が聞こえてくるではないか。耳を澄ませて聞くと、どこかで聞き覚えのあるメロディーだったが、その曲名と歌手名がでてこない。ただ一ついえることは、歌っているのが僕が探しているジンハーン自身であることだった。せっかく歌っているのに扉をノックしてお邪魔をするのもなぁ、さっきヨンジンを強引に起こした失敗を繰りかえさないようにと何もしないままヨンジンのもとへ向かった。「ジンハーンは?」ヨンジンは不思議そうに尋ねた。「シャワー浴びていたからそのままにして来たよ。」
ヨンジンは僕の答えに何やら不可解さを感じているようだったが僕らは学校へ向かうことにした。
しばらくすると、後ろから何やら気配を感じた。
「ヒロ!おいてくなよ。」
何時の間にかに追いついていたジンハーンが気持ち息荒そうに話して来た。
「いやぁ、ごめん。」
結局、謝るはめになってしまった。こんなことだったら、さっきバスルームをノックしておくべきだった。これまた、"後悔先に立たず"、いや、"後の祭り"だ。というより、まさに"弱り目にたたり目"と言ったところだろう。その場の空気を変えるために
僕は、「さっき、鼻歌歌っていただろ。」
と彼をからかってみた。ジンハーンは「あぁ、聞かれてしまった。」と照れくさそうに話した。その時、あれが何の曲だったかやっと思い出した。
「シャキーラの"Forever"だったよね。」
「あぁ、はずかしぃ。もう、それ以上言わないでくれ。」
彼はついに赤面してしまった。
いろいろ三人で歩きながら話している間に僕らは学校に着いた。外観は、相変わらずのオンボロさだ。扉もアルミ製のよくプレハブで使われているものだし、一部天井の窓は割れたままだ。閉まりの悪いアルミの扉を開けると、たくさんの生徒が既に受付けのために集まっていた。しかし、知らない顔の生徒ばかりだ。それにしてもガヤガヤとにぎやかである。ふと、僕の名前を呼ぶ声が聞こえた気がする。「ヘッジホッグ!ヘッジホッグ!」確かに僕のことだ。人込みの中で誰が叫んでいるのか、見分けが付かない。コツコツ、ミシミシと古くなった木の床を誰かが力強い足踏みでこっちに近づいているのだけは正確に聞き取れる。そして、次の瞬間、僕の瞳に天高く舞い上がった両こぶしが飛び込んで来た。僕との再会を心から喜んでくれているのがヒシヒシと伝わってくる。群集の中から2本飛び出している腕からそれが誰なのかもう僕にはわかった。「あぁ!」感きわまる。僕は久しぶりにこの感動から体が震えて来た。
つづく
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