ヘッジホッグ、汗と涙のワーホリ物語 No. 12
「多国籍ファミリー」

オフィスルームの鍵を開けて中に入ったウェンディーは直ぐに一枚の紙を僕に渡してくれた。
「これがあなたの新しい住まいの住所よ。」

行き方をきいた僕は早速、その新しい住まいめがけて進んでいった。一時は、家はないかもと心配していたのが今となっては要らない心配であった。バスから見る風景とはまた違い、歩いて見る風景はいっそう思い出を呼び起こしてくれた。このパブで昼間っからジンハーン(韓国人の友達)と飲んだなぁ。その後、学校の授業を受けて、妙にテンションが高くって先生から、「なにか良いことでもあったの?」って聞かれてなんとも答えようが無くて笑ってごまかしたことも今となってはいい?思い出になっている。

歩くこと10分で大きな白で塗られたフラット(日本でいうマンション)が見えた。ここが今度の住まいだ。入り口にはインターホンが付いていて、僕の住む部屋番号62を押すと一人の男性の声がした。「ハロー?」どうも懐かしいインド訛りの発音だ。「ハロー。今度そこでシェアすることになった生徒だけど、鍵を持ってないから入れてくれないかい?」「おぉ。いいとも。階段上がって3階だよ。」「サンキュー。」頑丈そうな重たい扉が開き、僕は3階まで上がり通路につながる角を曲が
ると直ぐに62番と書かれた部屋があった。「ここだな。」ここにはインターホンはなかったので、ノックをするとさっきと同じ声の男性が扉を開けてくれた。「ウェルカム!私はパキスタン人のフィリップだよ。」色グロで口髭を生やし、大きな眼を持
ち、七三分けした年齢不祥な男性であった。手を差し出し「名前は?」と尋ねてきた。僕は慌てて「ヒロ。僕の名前はヒロ、日本から来ました。」と答えてお互い握手をした。「ヒロ。君の部屋へ案内しよう。」この家は、2階建ての構造になっていた。

1階にキッチンとリビングがあり、2階にはバスルームと3つのベッドルームが付いていた。その1つをフィリップがノックすると中から気だるそうな声が聞こえた。扉を開けるとベッドに座っているこぶとりなアジア系の男性が、眠たそうな顔をして
こっちを見ている。フィリップは「新しいルームメイトだよ。」と言い残して出ていった。眠たそうな顔で一生懸命な笑顔を作り彼は、「戻ってきたんだね。韓国人のヨンジン パクだよ。」とうれしそうに話し掛けてきた。「あぁ、知ってるよ、僕。君のことを。僕はヒロだよ。」彼とは、昨年学校で見かけたことがあった。しかし、きちんと話すのはこれが初めてであった。彼は忙しそうに帰ったらまたゆっくり話そうと言い残しバスルームに行ってしまった。それもそのはず、彼はこの日バーガーキ
ングで朝からアルバイトが入っていたのだ。一人ぼっちになった僕は何もする訳でもなく1階に降りるとリビングにもう二人知らない顔が合った。一人は少し太目でフィリップ同様色グロ、口髭を生やし、大きな眼に眼鏡を掛けた天然パーマの男性パスカル。もう一人はその奥さん、小柄で色グロ、大きな眼をしたアクターであった。「ハロー、ヨロシクね。」とてもフレンドリーなパキスタン人夫妻である。

こうして、3人のパキスタン人、1人の韓国人、そして日本人の僕を加えたファミリーが揃った。そして、いろいろと文化の違いから起こる不思議体験もこの日からスタートした。

つづく




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