AKIのUK GUIDE




毎年冬になると行きたくなるのが、イギリス最果ての地と呼ばれるコンウォールである。なぜ最果てと呼ばれるかといえば、イギリス西部に細長く突き出たこの半島は、年がら年中ゲールと呼ばれる強い風が吹き、人を寄せ付けないような雰囲気を持つと同時に、不思議な妖精の国でもあるからである。今でこそ交通が発達し、夏はリゾート地として栄えてはいるが、それでも冬は人気のない寂しいところなる。私はなぜかこの冬のコンウォールが好きで、出かけて行くのです。  

今回は人魚伝説のあるゼノアという小さな村と、セントマイケルズマウントの町マラザイアンを中心に2泊3日で駆け足で周りました。

 ゼノアは広いムアと海に切り立つ断崖とで、人を寄せ付けないような小さな村です。村には聖公会の教会と、冬場は休館になる民芸博物館、パブリックフットパスの散歩道があるだけです。しかし、そのゼノア教会には人魚の椅子と呼ばれている古いベンチがあります。それはマーメイドの彫刻が施された他は何の飾りもありませんが、海から愛する人を追いかけて、人間に姿を変えたマーメイドが、この教会のこの古い椅子に海のしずくと涙で体を冷たくぬらしながら礼拝を受けていたと想像すると、とてもロマンスのあるお話が想像できます。その日は、私のそんな想像をいかにもかきたてるような冷たい雨が横殴りに降り、私も体を冷たくぬらしながらその椅子を見たのです。
 雨にぬれた私を、クリスマスの準備に来ていた教会の人たちが暖かく迎え入れてくれ、とても心が温まりました。バスのくる時間まで、ヒーターの前で暖をとらせてもらうとともに、クリスチャンの私はたった一人で神様と向き合い、クリスマスの賛美歌を歌う贅沢な時間となりました。

ランニョンクオイト
 翌日は打って変わっての好天気でした。冬のコンウォールには信じがたい青空でした。最近少しばかり落ち込んでいた私は、その青空で一度に元気になりました。そこで予定外にもムアの中の遺跡を見に行くことにしたのです。
 メンナントール、ランニョンクォイトと呼ばれるこれらの遺跡は、妖精の住みかとも、ケルト人のミーティング場所とも言われますが、私個人的には、妖精の住処と信じています。なぜなら、そう考えたほうが夢があって楽しいからです。そして、そこへ行く度に私は、自分が一人ではない気がするからです。どちらにしても不思議なところです。
メンナントール

さて、ムアを後にした私は、最後の目的地セントマイケルズマウントを見にマラザイアンへ行きました。セントマイケルズマウントは巨人伝説のある城です。この城は海辺から離れた島に建ち、満潮時は孤島となり、干潮時には陸続きとなるのです。昔々、そこに住む巨人がこの孤島からやってきて、村人を脅かしたそうです。勇敢な少年ジャックが巨人を倒すことでこの村に平和が戻ってきたそうです。まるで日本の桃太郎の鬼退治のようです。


 セントマイケルズマウント

驚くことに、私は幸運にもこの城主と話をすることができたのです。マラザイアンの町で教会のクリスマスキャロルに参加することになりました。親切にも老夫妻が教会の中や人たちを紹介してくれたのですが、その中に城主がいたのです。私は巨人、鬼を想像していたのでどんな顔をしているかとまじまじと眺めましたが、普通の紳士だったので安心したやらがっかりしたやら複雑でした。

 

翌早朝、私はコンウォールを後にしました。この日はイギリスこの冬一番の寒波。あちらこちらで凍結、積雪。車窓に真っ白に包まれた牧場、そしてストーンヘンジ。感動的でした。
 今回は本当に忙しい旅だったにかかわらず、いろいろな天候に恵まれ、悲しくもあり嬉しくもあり、そして、よき出会いもありました。訪れるたびに違う感動に出会う。それが私にとって、この冬の寒さにめげず、コンウォールへと足を運ばせるわけなのです。人がひとつの所にこだわる、ひとつのものに熱中する。その度に、飽きるのではなく、より深く知り、考え、感動する。そんなこだわりを大切にしたいものです。  

特派員AKI

 

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